着工が始まっても「施主」として「かかわり」
を持ちながら、工事の進行を見守る
基本設計が終わり、細部に渡る設計工程が終了するといよいよ着工です。ここから先はいよいよ住宅が少しずつ出来上がっていく楽しい工程です。実際に、施主の立場として現場と関わりながら「少しずつ家が出来ていくのを見ながらお酒を飲む。本当に夢みたいだ。」という家の出来上がりをじっくりとかみ締めながらこの工程を楽しむる施主の方の体験談を聞いたこともあります。
しかし、これまで住宅設計を進めてきて、具体的にどのような空間が出来上がるのかのイメージが出来ていたとしても、実際に着工が始まれば不安なことも多いと思います。特に「欠陥住宅にならないだろうか」「手抜き工事をされていないだろうか」など、世間のマスコミが騒ぎ立てるようなことで必要以上に不安になる方が多く、そうならないようになんらかの手を打ちたいと考えるのは当然です。しかし実際に着工し現場でこれらの不具合がないか、工事の進捗は大丈夫か、を確認したり、様子を伺ったりするのは専門の知識を持ち合せていない施主にとっては非常に難しいことです。
よくお聞きするのは、自分の家なのだから自分で「現場の○○を見る」「○○を調べる」というような点検にも似た作業をするべきだという意見も多いのは確かです。この意見はもちろん言っていることは正しいのですが、問題はそれを行うスキルを持ち合せていない人に可能かどうか?という点です。素直に結論を述べればそのような確認行為は施主である貴方の役割ではありません。そう施主として現場の作業や工事の方法等に直接関わるということは必要ないのです。
しかし「実際に見ないと心配」と思われる方、これは正常な感覚です。しかしほとんどの住宅建築を依頼する施主は住宅建築において専門的な知識を持ち合わせていないのが現実であり、実際に自分の家の工事を見たとしても「何が良くて何が悪いのか」の判断はつかないのではないでしょうか。例えば、「筋交いの入り具合を確認すると良い」と本で見てそれを確認しに行ったとしましょう。しかし「確認したいポイント」は判ってもそれくらいの知識で実際に現場を見た際、良いのか悪いのかは判断できない方がほとんどだと思います。
しかし気になる・・・でも現場を見てもよく判らない。では一体どうすれば良いのでしょうか?その答えは又しても「建築設計士にお願いする」です。彼らは貴方にとって本音をぶつけ基本設計を行ってきた信頼できるパートナーであり、しかも住宅建築、設計においてはプロなのです。ですからこの「頼れる設計士」を活用しない手はありません。(契約にもよりますが)設計が終わっても設計士の役割は終わりではありません。ですから住宅の工事が始まった以降も貴方が不安に思っていることや気になる点があれば代わりにお願いして見て貰えばいいのです。しかし中には「どこを見れば良いのかというポイントさえ判らない」という方も大勢いるでしょう。その場合には、その気持ちそのものを素直に伝えましょう。そして具体的に「工事の進行中にミスが起き易い点」や「気にしておくべき点」を聞いて、更にその部分を重点的に彼ら建築設計士に見て貰うようにお願いすれば良いのです。
着工以降、現場での施主のかかわり・役割
具体的には現場の様子を写真や動画で収めて貰って後から解説して貰ったり、一緒に現場に赴き説明して貰ってもOKです。
このプロが味方として付いた上で各工程を進めることが出来るという点は、「設計~施工まで一貫して家づくりを行う方法」と比較した場合、非常に優れている点であり、建築設計事務所に設計を依頼する最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。
では施主は着工~竣工までの期間中、現場においてやることがないのか?といえば答えは作業的に述べれば「No」ということになるでしょう。しかし、とはいえ現場に行く必要がないのか?と言えばその答えも「No」です。貴方には「顔を見せにいく」という単純でありながら非常に重要な役目が残っています。
チェックポイントを建築設計士と相談した上で
実際のチェック作業は任せ、報告を聞く
現場で具体的に「こうするべき」というような役割は全て建築設計士に任せ、十分なコミュニケーションが取れていれば基本的には大丈夫です。しかし、具体的な作業や監督をやることがなくても暇があれば建築中の現場を何度も見ておいてください。ここで言う「見る」とは何かにターゲットを絞って工事を監督するという意味ではなく、「私たちの家をお願いします」という気持ちで現場の施工者の方にお願いするという意味で貴方にしか出来ないとても重要な仕事です。
良い家というのはその大部分が設計の段階で決まります。しかし、家を実際に造るのは現場の施工者です。全く現場に姿を現さない顔も知らない施主とちょくちょく現場を見に来て「お願いします」と顔を見せる施主。きっと後者の方が施工者も仕事に熱が入るのではないでしょうか。難しい話ではなく、「この人たちのために頑張ろう」と思って貰うことが大切なことなのです。つまり施主の役目は「檄を飛ばす」ことであり、専門的なことは既に貴方のチームである頼れる設計士に任せることで現場は上手く回ります。もちろん問題があれば、説明や解説を求めればよいでしょう。
着工が始まれば、施主である貴方は実際の住宅が建った後のこと、つまり竣工後の手続きや家具や家電選び、引越しの手続きの手配や電気・ガス・電話等のインフラの手配、役所や会社・学校などへ届出を行うべきものなど貴方にしか出来ないことがたくさんあります。これらの仕事の段取りや優先順位をつけ進めていくことはもちろん非常に重要なタスクです。
夢の住宅取得まで、チーム全体で頑張っていければ貴方の家づくりはきっと素晴らしいものになるでしょう。