Top > 設計事務所で家を建てる理由 > 家は「買う?」それとも「建てる?」 ~家が建つまでのプロセスを比較
2つの表現には様々な違いがあるように思えてきます。
よく住宅を取得する際に使われる言葉で「家を買う」や「家を建てる」などの言葉を耳にします。普段それほど意識して使われていない言葉ではありますが、この二つには大きな意識の違いが潜んでいるのではないでしょうか?
まず「家を買う」とは文字通り買うことに他なりませんが、「建てる」と対比した場合「既に誰かのため(大衆向け)に用意された」家を買うようなイメージに聞こえます。つまり買うための家とは、実際に住む人を「見ないで」建てられた家であるということです。一方、「家を建てる」についてはどうでしょうか?「買う」とは対照的に「自分の」家を建てるという意思が反映されているように聞こえないでしょうか?
両者とも住宅を取得するという行為・結果自体に変化はありませんが、大きく異なるのは「家が建つまでのプロセス」と「住んでからの快適さ(や逆に不満な点)」に違いが表れてくるのが一般的です。それでは前ページの新規住宅取得時における選択肢毎に違いを見てみましょう。
家が建つまでのプロセスを比較
まず、家が建つまでのプロセスを比較してみます。
1.家が建つまでのプロセス・過程の比較
< 分譲住宅 >
- 打ち合わせが「基本的に」ないため、竣工までに必要とする時間がない
< 分譲マンション >
- 打ち合わせが「全く」ないため、竣工までに必要とする時間がない
< ハウスメーカー・工務店等 >
- 注文住宅を売りにしていることが多く、定められた仕様の範囲での打ち合わせ時間が数回必要
< 設計事務所 >
- 施主の要望を伝えたり、設計や仕様の詳細まで打ち合わせを行い都度合意する必要があるため時間が長くかかる
比べてみると、「分譲住宅」と「分譲マンション」は家を購入するまで打ち合わせの時間がほぼないのが特徴です。その理由は、施工業者が「実際に住む人」について特別な考慮は必要とせず極めて一般的となるような住宅設計を行うため、打ち合わせの必要がないのです。作り自体は一般的に好まれる作りとなることが多く、施工業者やメーカーが苦手とする分野がそのまま弱いままとなることが多いのも事実です。
それでは続いて「ハウスメーカー・工務店」を見てみましょう。こちらに建設を依頼することになった場合、自社内に設計士を持つことが多いことと住宅の仕様が最初から限定されていることから施主が決められることがそれほど多くありません。住宅設計のための打ち合わせと言っても「要望を伝える」ことよりも「決められた選択肢から選択する」ことがいわゆる「注文住宅」の基本。実際には家族の要望を伝えた訳ではなく、決められた仕様から選ぶだけのシステムですが不思議と「決めた気分」にもなりますし、打ち合わせもスムーズに進みます。ただ仕様外のことに対応することが難しいため「こうしたい」等の要望を施主が諦めなければならない状況が生まれやすいのも仕方のないことでしょう。
家が建つまでのプロセスには、依頼する会社によって
異なってきます。
最後に「設計事務所」で住宅設計を依頼した場合のことについて触れてみます。設計事務所に依頼した場合、他のケースと比較してもかなり長い時間をかけて打ち合わせを行う必要があります。これは、施主の要望とそれに応えるための設計を具体的に一つずつ行っていく作業で、細かな要望を設計士に伝えることが出来るということに他なりません。設計士の立場から逆の言い方をすれば、段々と「具体的な要望を引き出す」ための作業ということになるでしょう。
ポイントとなるのは、この「具体的」という部分です。例えば、リビングの場所と階段の場所にこだわりがあるのか?テレビを設置するのにテレビ台を使うのか、家のデザインと一体化した家具として備え付けで準備するのか?等々、「リビングをどのように使いたいのか?」という所から細かなところへと具体的に落としていくのです。ですから、この作業に時間がかかったとしても「希望に沿った住宅で今後数十年快適に生活できる」こととのトレードオフとなる訳ですから、非常に重要かつ大切な時間であることがお分かり頂けると思います。
ちなみに余談となりますが、一度設計事務所と契約を結んでしまえば「打ち合わせの時間」がいくら長引こうと支払う報酬・料金に違いがないことがほとんどです。住宅取得を極端に急いでいるのでない限り、打ち合わせは納得のいくまでじっくりと行うことが結果的に後悔しない住宅取得へと繋がるはずです。